「40歳定年制」がやってくる前にやっておくべきこと

「どうすれば、一生食べていける人材になれるのか?」誰もの頭を一度はよぎるこのテーマ。

人生100年時代をどう生きていけばいいのか不安だ。
● 自分には深い専門性は何もない。
● 今の会社を辞めたいけど、生活水準は落としたくない。
● 特別な才能がなくても、自分の名前で生きていきたい。

どれかひとつでも当てはまる方にお届けします。

「終身雇用」は維持できない

東大の柳川範之教授は「40歳定年制」を主張しています。この政策は、焦りを感じてしまう刺激的な名前ではありますが、中身はすごく堅実で「職業人生を20年×3回のサイクルで回します。その1回目を40歳とします。なぜなら40歳ならまだ"学び直し"が間に合うから。」という話です。だけど「理屈はわかるけど、俺たちはいったいどうしたらいいんだ?」という声もあります。そこで「定年が40歳になる前に、僕たちは何をすべきか」という具体論について考えていきます。

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柳川教授が「40歳定年制」を提唱した背景として「終身雇用」いわゆる長期雇用は良いか悪いかの問題ではなく、もう維持することができない、現実的に考えて変えざるを得ないという前提があります。

社会的な背景として、ひとつは技術革新のスピードが速くなり、産業の栄枯盛衰が速くなってきていること。もうひとつは少子高齢化が進んでいることです。「技術革新」と「少子高齢化」。つまり、1つの会社にずっと居続けることが難しくなる中で、働き手は減っていくので、一人ひとりには長く活躍してもらわないといけません。この2つの課題を両方とも解決していくことを考えたときに「40歳定年制」という発想が生まれました。

要するに、先に「40歳」という区切りを設けることで、そのタイミングで自分のキャリアを見直すことを前提に社会をつくっていかなくてはならないという発想です。

この発想の基本的な考え方は「適材適所」です。誰でも自分の能力にあった場所、一番能力が発揮できる場所で働くのがいいということです。営業や接客に向いてる人が経理をやっても、あまり能力を発揮できません。ただ、重要なことは、適材適所は時間とともに変化するということです。そうすると「ずっとひとつの場所でいること」を前提とすることは難しくなります。

「社内失業者」を見える化する

今の日本は実質的には40歳ぐらいでキャリアの区切りがついているように感じます。大企業では40歳ぐらいになると、出世する人はどんどん出世して、そうじゃない人は出世が止まります。また、日本のメガバンクやメーカーなどには、今、約500万人もの「社内失業者」がいるという推計もあります。ということは、実質的に「40歳ぐらいで勝負はついている」というわけです。でも、それが見える化されていないので「40歳定年制」はそれを見える化するわけです。

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ただし、長期雇用にもメリットがあります。みんなでチームワークよく、わりと長い期間、同じチームで働くというのは、日本企業だったり、日本人の特性です。それはある程度、活かしていくべきです。そうはいっても、たとえば新卒から70歳まで働くとなると、50年間、同じチーム、同じ会社で働いて、実力を発揮し続けなければなりません。それは相当に難しいことです。なので、その期間を10年や20年にもう少し短くして、人が動けるような体制をつくっていかなければなりません。これが「40歳定年制」の理屈というわけです。

つまり「長期雇用のメリット」を活かしつつ、変化に対応する。それが「40歳定年制」の真意です。労働者の幸せを追いつつ、経済が活性化する方向を目指すということです。

もうひとつの大事なポイントは、「リカレント教育」を40歳できっちり行うという点です。たとえば、北欧の場合は、解雇は比較的自由なので、そういう意味でのクイックな転身ができます。ただ、それだけだとみんな不安になってしまうので、そこを補う「リカレント教育」、つまり「学び直し」が充実しているのです。これをしっかりとやって、安心を得つつ、新しい方向転換を労働者が図っていくようにできれば、安心を損なわないで経済全体がいい方向に進みます。

今あるスキルを補完する

40歳定年制の時代がやってくる前にやっておくべき準備を3つ紹介します。

1つ目は「スキルの斜め展開」です。スキルの斜め展開とは、今自分が持っているスキルを補完してくれるようなスキルを身につけるということです。たとえば、ヘアカットしかできない美容師がメイクアップの技術も身につけたら仕事の幅は広がります。

こんなふうに自分の周りでやってる仕事を少しでも、100%でなくても、5割とか6割ぐらい身につけられれば、仕事の幅は広がります。「基本はインタビュアーで記事を書いているけど、写真もできます。あるいは、カメラマンだけど、多少記事も書けます。」といった感じに広がっていくのです。まったく離れているスキルではなく、自分が日頃、一緒に仕事をしている人のスキルをできるようにするというのが具体的なポイントです。

この概念に似たものに「ピボット型キャリア」というものあります。強みをいくつか掛け合わせて持っておき、ひとつの強みが消え去る前に新しいものをかけ合わせていくという考え方です。前提として、職業には「賞味期限」があります。仕事は、生まれては消えてを繰り返しています。そして、これまでの時代は就労期間が短かったので、定年まで1つの軸だけで生きていくことができましたが、今の時代、人生100年時代は違います。だから「軸足」を持ちながらも、少しずつずらしていく「ピボット型キャリア」で、今ある強みを「軸」に新しい強みを次々かけ合わせていくことが必要です。

「スキルの棚卸し」をする

これからの時代を生きて行くうえで、重要なことの2つ目は「スキルの一般化を図る」ことです。たとえば、40歳ぐらいまで同じ会社にずっといると、知識はあるけど、その会社でしか通用しないと思うことがあります。それは実は、半分正しくて、半分正しくありません。

会社で習得できるスキルをもう少し「普遍的」なものとして捉えられれば、他の会社でも使えるジェネラリスト的なスキルはいっぱいあります。たとえば「あの人」とか「この人」、あるいは「あの部署」という固有名詞で頭の中に入ってるものを、一般名詞に置き換えて考えてみます。そうすることで頭が整理できるし、スキルが一般化できます。

また、一般化するのに役に立つのは、学問です。経済学や経営学など、それ自体は無味乾燥に見えますが、実はいろいろな経験を積んできた人こそ学ぶべき学問なのです。学問を学べば「経営学のいってるこの話は、自分の経験したあのトラブルの話だな」とか「自分が悩んでいたあの話は、こういうことで整理できるな」といった具合に分かってきます。個別の経験や具体的な知識がだんだん一般化された情報に落とし込めていきます。

もう少し気楽にできるものとしては「自分にラベルをつけること」です。どんなものでもいいので、自分にラベルをつけることから始めます。どんなニッチな領域でもいいので、まず、自分自身が今の自分に「キャッチコピー」をつけるとしたら何かを考えます。ダサくても、質にこだわらなくても構いません。たとえばこのような感じです。

● 新規開拓の鬼
● 既存顧客のニーズ汲み取りエース
● プロジェクトのリスク掃除人

こうやってラベルをつけることで「自分が次にやるべき仕事は何か」の判断軸を持つことができ、実践していけばいくほどラベルがどんどん強固なものになります。これなら、今日からでも始められます。

転職をリアルにイメージする

3つ目は「バーチャルカンパニーを作る」ことです。バーチャルなので、本当に会社をつくる必要はありません。架空の会社をつくったことにして、たとえば「この4人だったら、どんな仕事ができるだろう。」とか「この4人だと、どんなスキルが足りないだろう。」と話し合ってみます。そうすると、お互い「この人にはこういう能力があって、あの人にはこういう能力があるよね。」とか「チーム全体だと、こんな能力があるよね。」と話をしていくうちに自身のスキルがわかってきます。

逆に言えば、5年後に本当に独立するとしたら「自分はこのスキルが足りないから、こういうことを身につけておいた方がいいな」といったように、足りない部分も明らかになります。

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転職への準備としてなら、もっと手間を掛けずにできることとして「物語を追体験すること」が重要です。転職は、ロジックだけでは絶対に答えがでません。恐れから踏み出せないというケースも多いです。でも、それは当然です。なぜなら「やったことがない」からです。転職は、ロジックだけではできないのです。だから、他者の転職活動を感情的な部分も含めて追体験することが必要です。

実際に転職をした人から体験談を聞くといったことでも追体験をすることができますが、もっと手軽に追体験をするなら、本を活用する方法もあります。たとえば、北野唯我さんの書籍『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』は物語形式になっていて、実際に転職活動をしたときに体験するであろう心の揺れがリアルに描かれていて、転職の全体像が見えてきます。

「40歳からの学び直し」が転職に不可欠な理由に続きます。

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