「社内失業者500万人」時代を生き抜くための職業人生設計

「どうすれば、一生食べていける人材になれるのか?」誰もの頭を一度はよぎるこのテーマ。

前々回の投稿では「40歳定年制」の時代が来る前に個人が何をしておくべきか、前回の投稿では「40歳の学び直し」が転職に不可欠な理由について考えました。今回は、社会が変わっていくべき点にも言及しつつ、社内失業者になってしまわないために「あなた自身がやるべきこと」について考えます。

M&Aが今いる社員の成長を止めた

企業がM&Aという選択をとる機会が増えつつあります。日本企業が成長をM&Aに頼るようになった背景には、ひとつはM&Aという手法そのものが一般的になったということもあります。

M&Aは「時間を買う戦略」だと言われています。今は世の中の変化のスピードが速いので、そのスピードに対応しようとすると、M&Aを使うしかないのです。人が別の能力を習得したり、別のところで働けるようになったりするには時間がかかります。変化がゆっくりであれば、今までA部門にいた人をまったく違うB部門に異動させて、そこでトレーニングさせればよかった。場合によっては、海外にも出してやれた。ただ、今は、そんな悠長なことを言っていられないから新たに伸びていく産業で即戦力になる人材をM&Aで買ってしまう。そうすると、ますます既存の産業にいる人は居場所を失うわけです。

つまり、変化のスピードに対応するために「今いる社員をゆっくり成長させているヒマはない」ということです。

適材適所は会社の外にある

日本は、総合職を一括採用してジョブローテーションを前提に「長い時間かけて育てていくスタイル」です。これを客観的に見ると、他の国に比べて、変化に適応するスピード面ではディスアドバンテージを負っているのではないかと感じます。

ただ、必ずしもディスアドバンテージばっかりというわけではありません。チームワークもよくなるし、変化への対応力が遅いということは、言い換えるとショックに強いということでもあります。

変化とショックは似ています。イメージでいえば、左右どちらかに動くと「変化」ですが、そのあと元に戻ったのなら、それは「ショック」です。そうすると、動きにあまりクイックに対応し過ぎると、単なるショックだったら待っていればよかったのに、いちいち左へ行ったり右へ行ったりしてしまうという状況が生まれるわけです。たとえばアメリカだと、景気が悪くなるとすぐレイオフ(一時解雇)されてしまうので、雇用が不安定化して、デメリットが生まれています。

つまり「変化に対応しすぎるから、社会全体が疲弊することがある」ということです。

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経済学の専門用語に、社内を労働市場に見立てる「内部労働市場」というものがあります。日本企業の強さは、社内でうまく人を適材適所に配置する内部労働市場にこそあるのだと言われたこともありました。技術革新が起きる、市場環境が変わる、そうするとその人に合った仕事、その人に合った働き場所が変わっていくわけです。ただし、この変わっていく先の場所が、社内のなかで確保できるのであれば、社内の中で人が動けばいいわけです。それが、いわゆるジョブローテです。

外部の通常の労働市場、つまり転職だと、情報の非対称性が高すぎて、その人がどの仕事に向いているのか本人もわからないし、雇う方もわからないから、ミスマッチが起きます。ところが会社のなかであれば、人事部がその能力をちゃんと把握しているので、社内に適材適所で配置できるわけです。だから日本企業は強いのだと言われていたのです。

つまり、昔は「社内のローテーション」だけで変化に対応できていたが、今は吸収できないほど変化のスピードが速いので「社外の転職マーケット」でそれを対応すべきなのです。

今、起きてる一番の問題点は、適材適所が社内で回しきれなくなっていることなのです。適材適所が社内にないケースが増えています。だから、人が会社の外に適材適所を見つけられるようにしないといけません。これが人材の流動化、雇用の流動化が必要だと言われる一番の理由です。この認識が人によって違っていて、それは社内で十分見つけられるはずだと思っている人もいれば、そこにはもうあまりないから外に探さなきゃいけないという人もいます。

いじけた「社内失業者」にならないために

現に今は「社内失業者」が500万人もいるという推計があります。

今の父親世代も含め、ちょっといじけているというか「ついていけない、閉じ籠もってしまいたい」というマインドになってしまっている人が多いです。そういう人たちは、置いてけぼりになってしまっているように思います。

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そういう人たちは、本人にとっても社会にとっても、とてももったいないので、ぜひ活躍の場を見つけてほしいです。ただ、ある程度年齢を経た人は、時代が変わったからといって、そう簡単に左にいたけれど右に行くというのは難しいと思います。なので、考え方としては「今まで培ってきたものを活かす」ことでしか未来はないのではないかと思います。

前々回の投稿でご紹介した、自分と一緒に仕事をする人のスキルを少し身につける「スキルの斜め展開」と、軸になる強みをもとに新たな強みを加える「ピボット型キャリア」の考え方です。

やっぱり長年やってきたことの優位性はあるので、これを活かす形で展開していかないともったいないです。ただ、このままで上に上がっていくのは難しいかもしれないので「斜め」に行くわけです。

具体的な「スキルの斜め展開」の例として、たとえば、雑誌の編集者の方は「雑誌が売れないんです」と言うわけです。でも、雑誌の編集者の人は、ものすごく今需要がある能力だと思います。編集したり、何かをうまくまとめあげたりする能力は、これからすごく重要になってきます。ただ、それは雑誌の形はとらなくて、ウェブの編集みたいな形にはなっていくのだろうと思います。ウェブを綺麗に作って、表面的なことだけではなく、ちゃんとポイントを見せてレイアウトして、あるいは誰にインタビューして、どうウェブを作り上げていくかを決めるような仕事は、これまで雑誌の編集者が培ってきた能力と基本的にはあまり変わらないわけです。

スキルは、専門性と経験の2つに分かれていて、そのうち編集者の「専門性」は編集の技術です。いっぽうで「経験」はどの業界を選ぶかの影響が大きいです。今「紙媒体」という業界は死にかけているけど、「編集」という専門性自体はまだ賞味期限があるということです。

求められる「リカレント教育」の充実

民間企業が中心となり、スキルアップの「リカレント教育」を充実させていく動きが必要です。結局リカレント教育は、実務を知らない大学だけではできません。そうすると、企業や各産業がいろいろなリカレント教育を提供し、そのトレーニングを別の会社の人が受けられるような仕組みがないと回りません。リカレント教育のための「社外への留学制度」みたいなものです。

40歳ぐらいで別の産業を勉強しにいってもいいのです。ある種、社内研修の外出しだったり、一般化です。40歳ぐらいの人たちが受ける社内研修がメニュー化されて、いろんな産業別に並んでいるイメージです。そうすれば、社会全体の「リカレント教育システム」になりえます。

「職業人生」を設計するのはアナタです

これまでの日本は「職業人生の設計」を会社や人事部がやってくれていました。でも、M&Aの影響もあり、今後は「自分でやらないといけない」時代がやってきました。だから「自分で考える必要」があります。

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日本が「雇用」の面で参考にするべきなのは、北欧モデル、具体的には積極的労働政策と言われる部分です。失業した人には、かなり手厚い社会保障を提供します。その代わり、単にお金を出すのではなく、次の就職につながるような「教育システム」にお金を出すのです。「きちんと教育を受ける代わりに、それでもう一回働いてください」という仕組みになっています。その代わりに企業は、比較的解雇をしやすくなっています。つまり「解雇の緩和」と「リカレント教育」はセットなのです。

北欧は国の規模がかなり小さく、国に対する信頼感も日本と違います。日本がそれをまったく真似られるわけではないと思いますが、学び直しやリカレント教育にお金を出して、もう一回社会で働けるようにしていくという仕組みは見習うべきです。それでなければ、社会保障費が膨らんでしまいます。失業保険とか生活保護とか、こういうところにお金を出すのは重要ですが、それは最後の手段です。できることならば、そういう状態にならないように、もう一回ちゃんと社会で働けるような環境をつくることにお金を出した方が、社会のためにも本人のためにもなります。ここにかけているお金が国際的にみても、日本は圧倒的に少ないのです。あくまで国がきちんと環境を整えたうえで、個人が移動しやすい社会をつくるべきなのです。

ほとんどの人は、今の仕事しかやったことがありません。本当は別の仕事の方が向いていたり、面白かったりするかもしれません。ただ、やってみるチャンスがないからやれないわけです。今の場所ではなく、他の場所で働くべき人がたくさんいるのです。

行動しても変わらない人生はどうすればいいのか

いろいろ試してきた、チャレンジしてきた、努力してきたけど、結局、道は開けなかった

行動しても変わらない人生はどうすればいいのか。ここまでお読みいただいた方の中にも、そういった人は少なくないと思います。

攻略不可能とも思えた「人生無理ゲー」をクリアするは、行動しても今の現状を打破できなかったという方に向けての投稿です。

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